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大人から変わろう


「大人から変わろう」

というテーマで、またいつものとおり長くなりますが、団長語録を残します


娘が昨年までお世話になったミニバスケ監督は、現在50代後半
「地域で地元の子を育てる」という子供会の中から、ミニバスケを創立された経緯もあり、ミニバスケを教える最大のコンセプトが「子供の人間性の育成」

メチャクチャ怖いおっちゃんやねんけど、この方の子供への厳しさには…愛があります
だからこそ、当時小学2年生だった娘も、この方に預けてみたいと思いました

ファンダメンタル中心の基礎練習、挨拶、礼儀作法には、徹底指導されます
手は出ないが、カミナリが落ちる時は、地響きが渡るほどドカンと落ちます
しかし…子供ができないことは一切要求しません
教えてもいないことを要求する理不尽なことはないですが、できることをやらない子供には、間髪いれずに徹底して叱ります

裏の全国大会とも言われる奈良サマキャンで、チームを優勝にも導いた実績があるこの方…いくつになってもバスケへの取り組み姿勢は、真摯で謙虚
いろいろな人の意見にも耳を傾け、情報交換もし、書物も読み続けられます
そして、今見い出されたバスケスタイルは次のとおり
「小学生のうちは、体格差は関係なく、全員がオールラウンドプレイヤーを目指すべし。DFは原則マン・ツー・マンのみ。OF組み立ては、原則全員が逃げずにドライブで果敢に割ってレイアップ」
(練習ではミドルやロングシュートも練習するが、シーズン終盤までは試合で封印…しかし不思議と逃げずにドライブで決められるようになると、ミドルも決まるように…)

そして、何よりも、ミニバスケを通じて子供達と接することに「哲学」をお持ちです
それは、ミニバスケを卒団した子供達が、中学・高校・社会人のどの場面でバスケを辞める事になったとしても、その先その子が「どのような魅力的な人間に成るか」を見据えて、その「人間性」の基礎を作るのがミニバスケ指導者の最大の使命だとされる点です

魅力的な人間になれるために必要な「心の強さと人への気配り」
…この感受性を磨くために、小学生のうちから、容赦なく愛の叱責が飛びます
叱責が多い子には「期待してない奴には叱らへんねん!おまえを期待してるからこそ叱るんやぞ!期待される人であり続けろ!少しずつ人としてステップアップしろ!」とメッセージだけは送ります
また、子供達の成長の瞬間は、漏れなく拾って「ナイスプレー!」と声は掛けますが、最大限のホメ言葉「お前ら良くやった」という言葉は、卒団式でも言わない頑固さ
なぜなら、ミニバスでの戦績がゴールではないからです

それは中学以降のバスケでも同じ
卒団した子の中にはジュニアオールスターズ選出・全中も出場して今年四国のバスケ名門校入学のOGや、先日のウィンターカップに出場している男子OBもいます
しかし監督は、彼らや彼女らにも「よくやった」とは今でも言いません
全中出場、インターハイ・ウィンターカップ出場を果たすなんて、バスケをやる子には、とんでもなく輝かしい実績ですが…監督は、「それはあくまでもその子 の各ステージの目標の一つであって、人生の目的ではない。彼らは褒められることを期待せず、親に感謝すべきであり、私も各ステージごとに『よくやった』と いう声がけは、子供を勘違いさせるから慎む」とキッパリ

一方、そのOBやOGも、さすがの人柄に育っており、監督のそうした想いも充分わかっているので、監督からの「またお前ら…時間があればミニの子の相手で見本を見せてきてやってくれや…」という声がけが、最大の賛辞であることを理解しています
そして、彼らが載った月バスは、実は監督は何冊も購入され、陰ながら目を細めてそのページを大事に眺めておられる事も、周りの人は結構知っていたりします(笑)


しかし…監督の悩みは、この数年、ずっと同じところにあります…


それは、各家庭での子供への親の関わり方
…つまり、いろんな意味での過保護が絶えないことです
その過保護ぶりが、世代により差はあるようですが、確実に年々増しているとか…

「可愛い子には旅をさせろ」…細かな失敗を繰り返すことで、たくましい自立心が芽生え、率先して自分で物事を考えるようになり、“気づき”の機会が多くなる
監督は、とりわけ自立心が芽生えることによる子供の“気づき”を重視されます

“気づき”が多い子が増えると、仲間を大切にし、子供達の中から「試合に勝ちたい」「闘うのは対戦相手ではなく、挫けそうになる自分自身」という気持ちが芽生えます

しかし、熱心すぎる親の方が勝ちたい気持ちが強い家庭も少なくないみたいで…
「ほら!試合の日が近づいているから、自主練しなさい」
「前の試合のビデオで、自分の悪いところを学習しなさい」
「試合では声を出しなさい!」
そういう指示は監督に言わせると全く不要だと…。

親やコーチ陣に言われてからやるような子では、絶対次に繋がらないし、伸びない
自ら気づく子は、率先して行動に表れるし、継続と発展がある
要は、子供達の中から「勝ちたい!」という気持ちが出てこない限り、絶対「自分に勝つ」子は生まれてこない
そういう気持ちを摘んでしまっているのが、こうした親の口出しであると断言されています
実は、監督ご自身も、チーム創部当初はご自身の「勝ちたい!」という気持ちが子供達よりも勝っていた時期があり、子供達から「勝ちたい!」という気持ちが出てこないうちは、チーム戦績も一向に芳しくなかったという実体験の反省もあるようです

その他、試合会場でも熱い親御さんからの次の光景も散見されます…

「試合時間を考えるとそろそろアップしなさいよ!」
「水筒の中身は補充してあるの?」
「次の対戦相手の試合はきちんと観察しておきなさいよ!」

日頃の監督の指導以上に、試合時間以外のそうした親の口出しが、結果として子供達の心の成長を止めることになると…
アップ不足、水筒の補充忘れ、対戦相手の研究不足…これらによる敗戦は、まず「子供達自身の失敗」から学ばせないといけません

ある日、試合に寝坊して遅刻到着した子供の「お母さんが起こしてくれなかったから」の言い訳発言に、監督が「6年生にもなって、日頃親に起こしてもらうとは何事や!バスケ以前の問題や!」と強く叱責したことは象徴的でした

日々の生活だけでなく、バスケに関することも、極力親が子離れしないといけないようですね
皮肉にも、我が子がいつまでも自立心がないと嘆く親のほとんどが、子離れしていないケースが多いような気がします

子供の心や意識を変えるには、まずすぐ近くにいる大人…親から変わらなければいけないのかもしれません
団長語録第7弾の本質は、この「大人から変わろう」ということです
そして、大人が変わるためには…「勇気」と「我慢」が必要な気がします…


さて、最後に、監督が重視する「気づき」について、娘が監督に指導された時のエピソードを一つ…

娘は、フォワードながら、リバウンドも重要な役割でしたので、4年生・5年生の頃から、なかなか獲れないリバウンドには厳しい声が飛んでいました
試合で、そこそこDFリバウンドが撮れ始めた6年生の始め、「お前のリバウンドにはまだまだ満足していない。どうすればOFリバウンドも獲れるようになるのか、自分で答えを出せ」
監督の指示はそれだけです

数日経っても答えが見出せない娘は監督に聞きに行きますが、「ヒントはコートの中にしかない。おれに聞くな!」と一喝されて突きはなされる始末…。

5年生の頃には「お前はチームで一番足が遅いが、チームで一番速攻を決められるようになるためにはどうしたら良いか考えろ!」といわれて、答えをくれなかった時と一緒です
その時も悩んだ挙句の果てに見出した娘の答えが「足が遅い分、チームで一番スタートを早く切れば良い」というモノでした
実際、中学に入っても、チームで一番不器用である自覚があるだけに、試合中は間違いなくチームで一番コートの端から端まで走り回っています

しかし、OFリバウンドを獲れというのは難しい課題でした
ただ、悔しいながらも監督に言われた「コートの中にヒントがある。」ばかりをブツブツつぶやきながら、練習に励む毎日の中で、やはりこの時も娘の中に「!」とひらめきが出てきたようです。

「私は、全員でやるシュート練習の時、自分の順番が回ってくるまでコートの中を見てなかった!人のシュートを見ていない!」ということに気づきます
要は「人が撃ったシュートが、どういうタイミングで撃つとショートになるのか、ロングになるのか…観察する癖を付ければ、リバウンドで落ちてくる位置も予測できるようになる」という仮説を立てたようです

監督の狙いは、ソコにありました
結局「それが正解かどうかは、ワシにも解らん。せやけど、自分で気づくこと(仮設を立てる意識)が大切や。そうして自分で気づいた行動は、自然と継続するし、練習中の集中力が増すなら、それでエエんとちゃうか?」

僕自身、常にバスケを通じての人間形成は、社会の縮図と共通している事が多いので、日々驚かされることばかりですが…事業活動も一緒ですね

事業活動は、学校で習うようなお勉強にように、決まった答えはありません
しかし、人に喜ばれ、その対価としてお金を払っていただくことが何かというのは、日々の生活のちょっとしたところにヒントがあったり、それに気づくことで本人のモチベーションに繋がり継続できるようになることも、実はたくさんあったりします
そして監督が求めるものと同じように、見出した事が正解かどうかは、結果で判ると…

娘がお世話になったミニバスケ監督は、学校教員ではない街のおっちゃんですが、教育者である気がします
監督の愛のある叱責には「社会に出たら、自分で答えを見出せ!そのためにバスケを通じて、ハートも鍛えろ!感受性を磨け!」というメッセージが込められているような気がしてならないのです…

娘は昨春卒団しており、僕はOGの単なる一親父ですが、今でも娘の後輩達の様子を観に行っているのは、もしかして監督の言動から何かを学びたいと思っているからなのかもしれません


いつも団長語録では、次のような注意書きを最後にしますが…
やはり今回も僕がつぶやくこと全てが正解とは思っていません
団長がつぶやくからと言って、ツイワク団の理念として押し付ける気もありません
あくまでも体験談に基づく個人的に感じる一つの考え方です
ただ、娘のバスケ奮闘ぶりを見守る中で、お世話になる方々に共感できる部分は、こうした場で披露させて頂いています

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